昇圧回路 NJM2360(Output: 170V to 200V, 20mA) 2016.01.12


   ニキシー管 駆動回路の昇圧部分について、自分用の備忘を兼ねたページです。
   少し専門なので、分かり難いところもあるかもしれません。

   以下は、NJM2630Aのアプリケーションノート 3-4 NJM2360/60A 昇圧回路:大電力編 の流れで記述します。

   「DC/DCコンバータコントロールIC」を入手するにあたり、秋月電子通商さんのHP(http://akizukidenshi.com)をみていたら、
    NJM2360AD (JRC) が手ごろでしたのでこれを使う事にしました。

    また、通販で送料が発生するので、その他必要な部品も秋月さんのところで探しています。

  注意:
    あくまで趣味なので、部品バラツキやWostCaseAnalysis, FailureModeEffectAnalysisなどの量産化設計は行っていませんし、
    基本、問い合わせなどのサポートはしません。

    さらに、出力電圧が高いので、感電事故の可能性を「0」にできません。
    事故などの責任は持てませんので、このページは参考です。
    各々の判断と責任で、目的の応じた対策をしてご利用ください。


  ※1 の回路図や特性例は、新日本無線株式会社のHPで公開されている
     NJM2360Aデータシート及びアプリケーションノートからの引用です。
     http://www.njr.co.jp/products/semicon/products/NJM2360A.html にオリジナルはあります。


  ※2 の特性図は、株式会社ルネサステクノロジのHPで公開されている
     2SK3234 データシート(RJJ03G1069-0800)からの引用です。
     http://japan.renesas.com/products/discrete/pmosfet/gen_sw/device/2SK3234.jsp にオリジナルはあります。


  ■設計仕様
   手持ちの「ニキシー管 IN-12A」は1管あたり電流 3.5mA(max)見れば良いので、6管まで対応するとして、 電流:20mA(typ. max)
   管の保持電圧は150V to 200Vなので、電圧:170Vから200Vの可変。
   電源はDC12VのACアダプタを使うとして、200V*20mA*η(0.7)⇒ 5.7W⇒ DC12V,475mA⇒ DC12V,1A(秋月さんにある)

  ■設計条件


   VIN=12V, Vo=200V, Io >=20mA, Vripple(p-p)<=1V, η >=70%, Ta=25℃/50℃(max)

  ■発振周波数
   fOSC: 100Hz to 100kHz
   fOSCは高い程インダクタなどの部品が小さくなりますが、ノイズや効率が悪くなります。
   (100kHzはAMラジオ周波数帯より低いところです。普通に作れば問題無いはずです。)
   最大100kHzは最近の小型機器からみれば1桁低い周波数ですが、NJM2360は10年位前の開発品なのでこんなもんでしょう。

   ※1
   「発振周波数対タイミングキャパシタ特性例」では90kHzあたりから破線となっているし、ノートも72kHzで書かれているので、
   変動も含めCT=330pF (72kHz)を選ぶのが良いでしょう。セラコンで50V, 10%品を使う事にします。

   ※1
   「スイッチON/OFF時間対タイミングキャパシタ特性例」よりTon=9.4us, Toff=4.0us @330pF/Ta=25℃/VIN=5V
   VINは12Vで異なりますが、usオーダーでそんなに変わらないので、以降の設計にはこの値を使う事にします。

  ■インダクタンス
   インダクタは価格も高いし、重たく大きな部品になるなので、最適品を選びたいです。
   (最近はICのデータシートに選定資料が載っていて、この計算が不要になることもあります。)

   ※1
   インダクタ L に蓄えられる電気量 PL
   PL = Po = (VIN - VSAT)^2 /(2 * L) * ton^2 * f より、

   L(MIN) = (VIN - VSAT)^2 / (2 * Po) * ton^2 * f

   Transistorは秋月で見つけた、2SK3234(500V, 8A) ⇒ VSAT: 0.65Ω * 0.5Aとして、0.32V。

   L(MIN) = (12V - 0.32V)^2 /(2 * 200V * 0.02A) * (9.4us)^2 * 72kHz

       = 108.488uH(MIN) なので、手持ちの150uH/220uHが使用できる可能性がある。

   インダクタンスは小さい方が巻き線長が短くなり、直流抵抗が小さい事による損出が小さくなるし、重量、サイズが小さくなるので、
   小さい方が良い。ギリギリを狙うと負荷回路の故障時マージンがないとかあるので目的に応じて選定することが大事。

  ■ピーク電流
   図2-16 のL及びTransistorに流れるピーク電流 Ipk(MAX)
   Ipk(MAX) = (VIN - VSAT) / L * ton

        = (12V - 0.32V) / 220uH
        = 0.49905A

   インダクタは通常2倍にするので、1A(MIN)の負荷品を用います。

   手持ちのインダクタ NS12575T 221MN(TaiyoYuden)の定格は温度上昇許容電流が1.35Aなので、余裕があります。
   量産するのであれば、もう少し小さなインダクタを探すと良いでしょう。

     ちなみに経験では、定格電流を超えた状態で使用し続けると、
     巻き線の発熱により巻き線が溶断する場合と、絶縁が失われる場合があります。
     絶縁が失われた場合、初めはインダクタンスが小さくなりますが、使い続けると最後は巻き線の断線になります。

     インダクタの温度ですが、巻き線の溶断部は1000℃を超えているはずですが、表面温度は形状や故障の状態により様々です。
     1℃上昇にならない場合や300℃を超えてハンダが解けた場合もあります。
     そうならないようにNJM2360Aの過電流保護機能も利用しましょう。

  ■スイッチングTransistor
   NJM2360Aは内臓のパワーTransistorを持っています。
   ※1
   NJM2360Aのパッケージは8pin DIPなので最大消費電力 PD = 700mW ですが、50℃では500mW程度。

   内臓Transistor使用の場合の消費電力 PIは
   PI = Po / η = Vo * Io / η = 200V * 20mA / 0.7 = 5.7W になるので 0.5W < 5.7Wで外付けTransistorが必要です。


   2SK3234(500V, 8A)を使用するなら、
   ※2
   Pc = 27.6W > 4W , ID = 8A > 0.499A(MAX)なので、放熱を適切にすれば2SK3234の使用は可能。
   72kHzのスイッチングであるが、IDのマージンが16倍(at Tc = 25℃)なので Pluseの検討は不要。

   Q2の 2SK3234の入力容量 Ciss = 970pF(typ) なので、GateにはTransistorを用いる事にします。


  ■バイアス抵抗器 RBE
   
   ※1
   図2-17のRBEはスイッチングトランジスタをより早くOFFさせる目的で設けます。
   RBEは、小さな抵抗値の方が早く動作させる事ができますが、小さくすると電力損出が大きくなります。

   FETを使う場合は、Q2のGate電圧を早く下げる為に、RBEでなく、Q1を使って下げています。
   なぜなら、2SK3234の入力容量 Ciss = 970pF(typ)なので、例えばRBEを1kΩすると
   OFFは700usec位かかります。 内臓Transistorのtoff = 4.0usecと同等にするにはRBEは6Ω位が必要になります。

   RBEは1kΩ、D2は電圧降下の小さいものが良いので、ショットキーDiode。 1S4(40V,1A)を選びました。
   Q1は価格(\1)につられて 2SA2029(ROHM)を選びましたが、パッケージが小さいのでハンダ付けの難易度は高いです。

  ■コレクタ抵抗器RC1,RC2
   Q2にFETを使う場合は、Gate電圧が十分となるようにする。
   VIN = 12V, VGS(on):4.0V(MAX)なので、NJM2360A 2pin出力が4.0Vを超えるようにする。
     RC1は省くことも可能だが、電圧を上げるとOFF時間遅れが長くなる特性があるので抵抗器は入れた方が良い。

     FETでなく、バイポーラTransistorの場合のRC1抵抗値は12.8kΩ以下。RC2抵抗値は2.74kΩ以下。

   RBEを1kΩとしているので、RC2系の影響もあるが、RC1を1kΩにしておけば、確実に4.0Vは超える。
   RC2はRC1近くの抵抗値にしたいがNJM2360A内Q2の動作電流をあまり絞りたくないので、470Ωとする。

  ■検出抵抗器 R1,R2,VR1
   ちょうど20kΩの半固定抵抗器を持っているので、それを使う前提でR1,R2を決めることにした。
   可変電圧もだいたいで良いので、R1 = 820Ω 1%、R2 = 110kΩ 1%を選ぶことにした。

   170V狙い: 1.25V / 820Ω * (820Ω + 110kΩ) = 168.93V (162.30V to 175.77V)

   200V狙い: 1.25V / 820Ω * (820Ω+20kΩ+110kΩ) = 199.42V (190.40V to 208.75V)


  ■過電流検出抵抗器 RSC

   RSC = VIPK(MIN) / IL(MIN) = 0.25V / 1A = 0.25Ω 1/2Wとする。

  ■平滑キャパシタ Co

   Co = Io * ton / Vripple(p-p) = 20mA * 9.4usec / 1V = 0.188uF以上

   250V耐圧品では、4.7uFがあったので、それを使う事にする。
   そうするとVripple(p-p) は、40mV程度になる。


  ■整流ダイオード D1

   逆方向耐圧の高いDiodeを探していたら、UF2010 (1000V, 2A)が見つかりました。


  ■回路



Referencetype
CIN110nF 50V
CIN2120uF 25V
RSC0.25 ohms 1/2W (1 ohm 5% 1/4W(4pcs))
RC11kohms 5% 1/8W
RC2470 ohms 5% 1/8W
L220uH (1.35A)
NS12575T 221MN (TaiyoYuden)
D1UF010 (2A)
Co4.7uF 250V
RBE1kohms 1/8W
D21S4 (40V, 1A)
Q12SA2029 (50V, 150mA)
Q22SK3234 (500V, 8A)
CT330pF 50V
R11kohms 1% 1/8W
VR120kohms
R2820 ohms 1% 1/8W
U1NJM2360A (JRC)


   部品は、手持ち品を使っていますので、最適化などは各々でご判断ください。




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